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子宮蓄膿症(Pyometora/パイオメトラ)

2023年11月20日(月)

今回は犬の子宮蓄膿症(Pyometora/パイオメトラ)についてご紹介します。

子宮蓄膿症は犬では非常に有名な病気で、当院でも毎月のように治療を実施しています。それぐらい多い病気であり、ただ死に至る怖い病気でもあります。
また写真も掲載していますが摘出した臓器の写真もありますので苦手な方はご注意ください。

 

概要
子宮蓄膿症とは…
子宮内に貯まった細菌が毒素を産生しそれにより重篤な症状を示す病気です。犬で起こることが多いですが、猫でも発生します。年齢は高齢での発症が多いですが、若齢での発症も認めるためどの年齢でも注意が必要です。
細菌は陰部の皮膚から入って子宮に感染を起こします。発情後1-2ヶ月は感染が成立しやすくなりますので特に注意が必要です。

 


図1 正常の卵巣子宮


図2 子宮蓄膿症で摘出したの子宮卵巣

 

症状
子宮蓄膿症の症状は、元気・食欲の低下、発熱、多飲多尿などがあります。陰部から汚い膿が出てくることで発見されるケースが多いですが膿がでない場合もあります。また陰部をよく気にすると言う症状で実際に動物が舐めてしまい気付かないケースもあります。状態が悪くなると子宮が破裂してしまうこともあります。
開放型子宮蓄膿症…膿がでてくる場合
閉鎖型子宮蓄膿症…膿がでてこない場合

また膿が溜まってくることや病気そのものにより全身性の症状が現れるケースもあります。
・子宮破裂による腹膜炎
・全身性炎症反応症候群(SIRS)
・敗血症or敗血症性ショック
・心室頻拍、心室期外収縮による突然死
・膀胱炎
・Neospora の感染率増加
・ぶどう膜炎

 

診断
レントゲン検査、腹部超音波検査によって腫れた子宮を確認します(図3)。また進行すると子宮が破れることもあり、強い腹膜炎を起こすことがあるので確認します。
血液検査も同時に実施し白血球の上昇がないか、また進行すると様々な項目が悪化するので確認します。特に腎臓の値は大切です。
子宮蓄膿症の診断は簡易ではありますが全身状態の評価が非常に重要になり、一つの検査で判断することは難しいため様々な検査を組み合わせて確認します。また近年では、院内死亡率および入院期間の予後予測としてqSOfA(迅速敗血症関連臓器不全評価)を用い、総合的に判断します。

 


図3 犬の子宮蓄膿症の腹部超音波画像 
⇒子宮が腫れていて、膿の貯留が顕著なのが確認できる

 

治療
外科治療と内科治療があります。それぞれのメリット、デメリットがあります。
当院では全身状態によって治療反応が良い外科手術を推奨しておりますが、手術が実施できない状態であれば内科的治療を行う場合もあります。

 

外科治療(卵巣子宮摘出術)内科治療(Alizin® プロゲステロン受容体拮抗薬)

全身麻酔を行い子宮卵巣を摘出する・ホルモン注射を行う。子宮の膿を排出させると同時に発情周期を進め、子宮が感染しにくい状態にする



・早期に治癒する
・再発がない
・全身麻酔せずに治療することができる




・全身麻酔が必要
・入院が必要

・治癒まで時間がかかる(数週間)
・治癒しないことがある
・再発することがある
・通院が必要
・治療効果が現れる前に死亡することがある

 

また当院には外科治療と内科治療を組み合わせて行う場合もあります。例えば、併発疾患や全身状態がかなり悪い、また超高齢なども当てはまります。膿で子宮が破裂しそうな状態であれば一旦、お薬で排膿させ状態を持ち上げた状態で手術に臨むケースもあります。
動物の状態に合わせた治療プランをご相談させて頂きます。

※当院で使用している内科治療のお薬は海外薬(日本では販売されてません)であるプロゲステロン受容体拮抗薬(アグレスプリン/Alizin®)です。一時的な改善は期待できますが根治するには、外科治療を推奨しています。

 

 

子宮蓄膿症は避妊手術をしていない犬猫に発生します。治療しないと亡くなってしまうことが多い怖い病気です。早期に治療をすれば救命率も上がります。気になることがあればお早めにご相談をお願いします。

 

獣医師 小野和徳