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猫の乳腺癌

2023年9月4日(月)

今回は猫の乳がんについてご紹介します。

 

【概要】
乳がんは乳腺に発生する悪性腫瘍です。
猫の乳腺の『しこり』はびっくりすることに8割が悪性と言われています。残念なことに乳がんで亡くなってしまう猫も多くいます。
猫は乳腺が左右に4つずつあります。4つの乳腺はリンパ管でつながっていて、脇にある腋窩(えきか)リンパ節と後ろ足の付け根にある鼠径(そけい)リンパ節につながっています。
そのため猫の乳腺のしこりは高率に他の乳腺やリンパ節、また最悪の場合肺に転移を起こしてしまいます。

 

【検査】
血液検査…全身状態の把握と麻酔が問題ないかのチェック
レントゲン検査…肺転移の有無、心臓の状態、腹部のその他臓器の転移チェック
エコー検査…心臓の状態、腹部の転移チェック
細胞診検査…乳腺腫瘍かどうかその他皮膚にできてしまう腫瘍ではないかのチェック

上記の検査を組み合わせることで全身状態の確認と腫瘍の状態をチェックして本当に手術の適応なのかどうか、また手術は問題ないかの確認を複数の獣医師で行います。

 

【治療】
治療として外科手術となります。
猫の乳がんの場合、片側もしくは両側の乳腺全てを切除する手術をご提案しています。侵襲が強い手術ではありますが再発予防のために有効であると分かっているので実施していることが多いです。また一緒にリンパ節の切除も同時に行います。
また腫瘍が大きかったりリンパ節に転移を起こしている猫は術後に抗がん剤を実施することもあります。

 

【症例紹介①】
当院で片側乳腺切除を実施した猫ちゃんの紹介です。
年齢は11歳のメスの猫ちゃんです。
この猫ちゃんは、食欲や元気は問題なく最近しこりを見つけたと来院されました。

身体検査で左の第4乳腺に5.1cmのしこりがありました。

まず検査としてしこりに細い針を刺して腫瘍の可能性が高いかどうか調べました(細胞診検査)。細胞診では腫瘍を疑う初見を認めました。
この猫ちゃんはレントゲン検査では明らかな肺の転移は認めなかったので片側乳腺切除と鼠径、腋窩リンパ節の切除を実施しました。

術後痛み止めの投与と術創の管理で2泊入院し退院しました。
病理検査の結果、乳腺癌と診断されまた鼠径リンパ節に転移を起こしているとの結果でした。
この猫ちゃんはがんのサイズが大きくリンパ節に転移を起こしていたので、術後抗がん剤の投与も行いました。
現在手術後14ヶ月経っていますが転移や再発なく元気に過ごしています。

 

【症例紹介②】
手術ができなかった猫ちゃんです。
発見時には、しこりは大きく自壊してしまっている状態です。また肺にも転移所見が見つかり手術ができない状態でした。
食欲が徐々に減退し、残念ながら数日で亡くってしまいました。

猫のしこりは早期発見が大切です。2cm以下で見つけることによって予後が大きく変わります。毛に埋もれ小さいものでは分かりにくいことも多いです。月に1回ほど猫のおっぱいをマッサージしてしこりがないか確認しましょう。

 

 

当院は猫の乳がんの知識を正しく伝えるキャットリボン運動(https://catribbon.jp)に賛同しております。より分かりやすく記載されておりますのでご覧ください。

 

獣医師 小野和徳